「スティーブ・ジョブズが子供に学ばせたかった
Appleのデジタル教育」
[著]ジョン・カウチ/ジェイソン・タウン
「Apple(アップル)」と言えばiPhoneやiPad、MacBookを生み出した、いまや誰もが知っている世界的な企業
本書はアップルの教育部門初代バイス・プレジデントであるジョン・カウチとハーバード大学特別研究員でモチベーション、学習、テクノロジーに関する調査を行っているジェイソン・カウチによる
アップルが目指す教育とテクノロジーの融合と取り組み、そこから導き出された最高の学習モデルについて書かれた本です。
ジョン・カウチは、アメリカの名門大学UCバークレー校大学院でコンピューターサイエンスを学び、ヒューレッドパッカード、アップルで働いた後
サンディエゴの学校改革に尽力し、再度スティーブ・ジョブズに誘われアップル社の教育部門の初代バイス・プレジデントに就任。
アップル社では自社の商品開発だけでなく、テクノロジーが教育の質を上げるためには不可欠として学校教育においてのテクノロジーの役割について研究を重ねてきました。
その研究から導き出された答えとは?
ジョブズが子供に学ばせたかった教育とは?
本書では実際の取り組み事例とともに詳しく解説されています。
情報があふれ進化のスピードが速い現代ではどんな教育を子供にしたら良いのか迷ってしまいます。
IT分野の先駆者のひとりであるジョブズが子供に学ばせたい教育を知ることは今後の私たちの教育への参考になるでしょう。
親御さんだけでなく子供の教育に携わる教師の方々にも読んでいただきたい【スティーブ・ジョブズが子供に学ばせたかったデジタル教育の内容とポイント】について解説します。
それではどうぞ!
本書のもくじ
- Introduction 覚醒
- Chapter 1 リワイヤリング
- Chapter 2 教育の目的
- Chapter 3 人間の可能性
- Chapter 4 モチベーション
- Chapter 5 学習の定義
- Chapter 6 学習空間
- Chapter 7 チャレンジ
- Chapter 8 チャレンジ設定型学習
- Chapter 9 アクセスの確保
- Chapter 10 創造型構築
- Chapter 11 コーディング
- Chapter 12 教えるということ
- Chapter 13 テクノロジーの活用法
- Chapter 14 教育革命
- Chapter 15 教育の未来
- 最後に 変える存在になろう
イントロダクションでは、ジョン・カウチとスティーブ・ジョブズの出会いや、当時まだアップルを創設する前のジョブズのエピソードが書かれています。
もともとヒューレットパッカードにいたジョン・カウチを引き抜くためにジョブズはジョンのお子さんを巻き込みます。
突然家に押しかけて来たジョブズが
論より証拠と言わんばかりに、自分が開発したパソコンを子供に与え…
このエピソードがもとでジョンはアップル社に入社することになります。
本書で紹介されていたジョブズの言葉
各学校にコンピューターが1台あれば、気づく子供が必ずいる。それでその子たちの人生が変わると思いました。(スティーブ・ジョブズ)
まさにこの時あたえられたパソコンにより、ジョン・カウチ、そして息子さんの人生が変わり、
ジョンの息子さんはジョブズにパソコンをあたえられて以降、テクノロジーへの興味を失うことはなく、大学卒業後eベイのウェブサイトを設計することが初仕事となりました。
彼だけでなく、その後多くの人がテクノロジーによって人生がかわりました。その進化はとどまることはありません。
ジョブズそしてジョン・カウチはテクノロジーが教育そして未来を変えると信じ進んできました。
「Appleのデジタル教育」が伝えたい3つのポイント

アップルは教育現場にて教育とテクノロジーの融合を目指しています。
テクノロジーによって教育格差を減らし、多くの子供達が平等に学ぶ機会を得ることが可能になると信じ教育革新を進めてきました。
その研究にてわかった3つのポイントをご紹介します。
「実践」が第一
デジタルネイティブの時代に学習において大切なことは
子供達が実際に何かをすることだと言います。
受け身ではなく、自ら積極的に動き人とのやりとりをしたときに初めて本物の学びを得ることができるのですが
この時、言葉で伝えるだけでは不十分で、
あくまでも自分で手を動かし発見し構築するスキルが必要となります。
例えば、スペースX社やテスラの創立者であるイーロン・マスクは、彼の5人の息子を名門私立学校に通わせていましたが、全員学校をやめさせて自宅で教えるようにしました。学校をやめた理由は、彼が望む教育が学校で施されていなかったからです。
イーロンの教育方針は「実践から学ぶ」であり
もしエンジンが動く仕組みを学ぶのであれば、ねじ回しやスパナについての知識を学ぶのではなく、
まずはエンジンを分解してみることから始め
どうすれば分解できるかを考え、ネジ回しが必要という答えに導きます。
この例のように、まずは座学ではなく手を動かし、そこからでた疑問を洗い出し、向き合い学ぶ方法が重要だとジョンは主張しています。
モチベーションは学びの基本
学習において「モチベーション」は何よりも大切です。
なぜなら、子供が学習でつまずいている時、その原因は子供に学習する力がないからではなく、子供が学習に価値を見出せない「なんでこれを勉強する必要があるの?」という状態になっているからです。
例えば、好きな歌の歌詞を覚えることはできても、数式はなかなか覚えられません。
それはなぜか?
数式を覚えるだけの作業は、何のために必要なのか子供が理解していないから。
より良い学習につなげるためには、子供自身が好きなことや得意なこと、興味があることを自分自身で見つけることがとても重要となります。
モチベーションには2種類ある
モチベーションは2種類あります
- 内発的モチベーション
- 外発的モチベーション
内発的モチベーションとは、自分の内面にあるものに誘発されるものであり、
外発的モチベーションとは賞や成績、親、コーチなど本人ではない人や物などの外的な何かによって誘発されたものです。
外発的モチベーションは短期的には効果的ではありますが、効果を持続し長期的にモチベーションを維持できるのは内発的モチベーションとなります。
モチベーションをキープする方法
モチベーションをキープするには
- 子供が自分で選ぶ
- 夢を叶えることは現実的考えて無理だと子供の可能性を狭めるのではなく不可能はないと信じる
- 失敗して学ぶ
これらの3つを行う必要があります。
ジョブズは、長期的な成功のためには短絡的な失敗を気にすることなく、むしろ失敗がないということはイノベーションを起こすほどのことをしていないとし問題視しました。
Appleが生み出した最高の学習モデルとは
アップルは教育とテクノロジーを融合した
「CBL(Challenge-Based Learning) チャレンジ設定型教育
というものを生み出しました。
チャレンジ設定型教育とは「疑問」を出発点とした学習モデルであり、
子供達は自分達で何にチャレンジするか決めるよう促されます。
CBLは生徒どうしで何にチャレンジするかを決めるよう促され
テクノロジーを使って学ぶだけではなく、自らコンテンツを生み出し育てることができるように教えていきます。
例えば、CBLではYouTubeで検索して動画で学んだりプレゼンに使用するだけでなく、自分達で疑問に対する動画をつくりYouTubeにアップするところまで行います。
ジョブズは、子供達にユーザーという立場から抜け出し、自ら生み出すクリエイターとしての役割を感じ、学んでほしいと思っていました。
まとめ

本書からスティーブ・ジョブズの言葉をご紹介します。
創造性とは単にあれとこれを結びつけることにすぎない。創造的な人に向かって、何をすればそんな創造的なことができるようになるのかと尋ねれば、きっとバツが悪そうな顔をする。だって、特に何かをしたわけではなく、何かを見ていただけなのだから。
しばらく見ていると、彼らには生み出すべきものが見えてくる。それは、これまでに自分が体験したことを結びつけたら、新しいものができたということだ。
出典:スティーブ・ジョブズが学ばせたかったAppleのデジタル教育
「自分には創造性がない」と思う人は多いが、それはウソだとジョブズは言っていました。
何かを生み出せる力というのは、生まれつき創造性がある人だけに贈られるギフトではない。
「強い好奇心と今までの体験で得たものごとを結びつけようとする強い意志があれば、誰でも生み出す人になれる」とジョブズは言います。
このジョブズの言葉は意外でした。
彼こそ創造性のかたまりのような人で、ゼロから生み出せる人のような印象でしたが
そもそも「ゼロ」というものはなく
「創造性とはすでにあるものを結びつけることで新しいものを生み出すこと」である。
この定義は新たな発見でした。
創造性を養うためには結びつけるモノゴトが必要です。
そのためにも、子供達が自分自身でチャレンジを決められる環境を整え、
モチベーションをうながし、結びつけるモノゴトを増やすインプットをたくさんできる機会を持つことが重要です。
「スティーブ・ジョブズが子供に学ばせたかったAppleのデジタル教育」はスティーブ・ジョブズやジョン・カウチが目指した教育を詳しく知り、理解し、これからの未来に向けて生かすことができるとても興味深い本でした。