STEAM教育

【書評】世界を変えるSTEAM人材~シリコンバレー「デザイン思考」の核心~|ブックレビュー

『世界を変えるSTEAM人材~シリコンバレー「デザイン思考」の核心~』

ヤング吉原麻里子 木島里江

GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)をはじめとした国際的な企業を抱え、先進的なアイディアとイノベーションが生まれる場所

シリコンバレー

世界トップレベルの知識と情報が集まり時代を先どるシリコンバレーで求められる人材的スキルとはどんなものなのか?

その問いにカリフォルニア大学卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得しイノベーションに関する制度と人材の研究をしているヤング吉原麻里子氏が出したキーワードは

「STEAM」

STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので21世紀型のスキルとして注目を集めています。

今回の記事では本書「世界を変えるSTEAM人材~シリコンバレー「デザイン思考」の核心~」より以下の3つのポイントについて解説します。

  1. STEAM人材とはどんなものなのか?
  2. STEAM人材に共通するポイント
  3. STEAM人材になるために必要な学習とは?

シリコンバレーで求められるスキルというと どこか遠い世界のように感じますが、筆者はこのように述べています。

STEAM人材の能力は特別な才能のある限られた人たちの話ではなく

適切なマインドセットとスキルを身につけることで多くの人に

到達可能な開かれたコンセプト

引用「世界を変えるSTEAM人材~シリコンバレー「デザイン思考」の核心~」

どんなマインドセットをし、スキルを身に着ければいいのでしょうか?

解説したいと思います。

それではどうぞ!

『世界を変えるSTEAM人材~シリコンバレー「デザイン思考」の核心~』のもくじ

本書の目次をご紹介します。新書で読みやすいページ数ですが、項目がかなり細かくわかれています。

はじめに

第1章 21世紀型人材「STEAM」

ポスト情報社会に必要とされる人材とは
未来をリードするシリコンバレー
シリコンバレーで活躍するスーパー人材たち
STEAM人材たちに学ぶ
科学とアートを融合する―ジョン・マエダ
コンピューターのオーケストラを率いる―グァ・ワン
人間とロボットを越境する―ヨーキー・マツオカ
STEAMとは何か
STEAM人材の三つの顔

第2章 新しいヒューマニズム―人間性を大切にするという理想

世界に広がるSTEAM教育
国際学力調査の普及
発明家大国アメリカの憂うつ
STEMからSTEAMへ
人間を大事にするという思想
先駆的教育者―キム・サックス
エンパシーはSTEAMの心

第3章 イノベーションを起こすマインドセット

STEAM人材はイノベーター
シリコンバレーのユニコーン
これってもしかして、ビジネスになるかも
「経験を貸し出す」というデザイン
STEAMが生み出すイノベーションとは
イノベーターのマインドセット
 ①型にはまらない think out of the box
 ②ひとまずやってみる give it a try
 ③失敗して、前進する fail forward
誰でもイノベーターになれる
スタンフォード大学の「バイオデザイン」
ニーズを発見することの重要性
医療と教育のイノベーション

第4章 デザイン思考の本質

STEAM人材とデザイナー
ビジネスの世界でデザインの重要性が増している
デザインの範囲が拡大
人間を重視するデザイナーの思考
論理よりも直観
デザイン思考は発想の道場
デザイン思考の「型」
 ①リサーチ
 ②分析
 ③シンセサイズ
 ④ビルド
 ⑤テスト
非連続で有機的なプロセス
バウハウスの設立理念―デザイン思考の源流
デザインの未来に不可欠なのはインクルージョン

第5章 シリコンバレーの教育最新レポート

21世紀スキルを育てる教育のあり方とは
新しい学びのフレームワーク
 ①プロジェクト・ベース学習(PBL)
 ②プロブレム・ベース学習
 ③デザイン・ベース学習

STEAM教育の五つの特徴
 ①教育の目的
 ②教育の関係
 ③教育の主体
 ④学習モデル
 ⑤教育が目指す人間像

新しい教育とイノベーションの関係
STEAMを育てる教育機関
心と頭をともに育てる―オローニ小学校
動物の世話やガーデニングで体験型学習
自主性の尊重
一貫教育にデザイン思考を取り入れる―ヌエバ・スクール
探求型学習メソッド
メーカースペース「イノベーション・ラボ」
社会を変える授業「ソーシャル・イノベーション」
官民連携の挑戦―デザイン・テック・ハイスクール
エンパシーを育成する高等教育―スタンフォード大学教育学大学院

第6章 私たちがシリコンバレーから学べること

シリコンバレーのエコシステムをデザインする
「収穫の谷」から「シリコンの谷」へ
シリコンバレーの元祖STEAM人材たち
スティーブ・ジョブズを育んだ環境
文化人類学者のような観察眼
ゴールドラッシュと起業家精神の伝統
ボストン「ルート128」とシリコンバレー
エコシステムの核は分散型のネットワーク
シリコンバレー・パラドックス
ヒューマニズムで達成するインクルーシブな社会

おわりに

それでは、先ほどもご紹介したこちらの3つのポイントについて見ていきましょう。

  1. STEAM人材とはどんなものなのか?
  2. STEAM人材に共通するポイント
  3. STEAM人材になるために必要な学習とは?

シリコンバレーで求められるSTEAM人材の重症なキーワードは「アート」

SETAM人材とは、最先端テクノロジーやサイエンス、エンジニアリングのスキルを持ちながら、芸術やデザイン、スポーツの分野でも才能を発揮し、挑戦と探求を続ける人たちです。

彼らは、答えのない疑問に「なぜ?」と問い続け、ひとつの分野に深くかかわるというより、複数の領域をつないで活動や学びを発展させます

これからのポスト情報化社会では、新しい価値観やサービスを生み出すことが必要とされており、プログラミングやデータの解析といったスキルをベースとして新しい課題を発見し問題解決をするSTEM(サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・数学)に加えて

【A=アート】

  • アート的な発想
  • デザイン的な発想

が必要とされています。

従来の考え方 

STEM (Science, Technology, Engineering, Mathematics)

現在の考え方

STEM + A (Art)= STEAM

※ここで言うアートとは、音楽、芸術、演劇や映画といったものに加えて、文学や哲学といったリベラルアーツ(教養)も含まれています。

今まで重要視されていたSTEMにA=アートを加えることで人間の生活がより豊かになることがわかり、ビジネスの分野でもアートやデザインの役割がこれからますます大きくなると言われています。

STEAM人材はSTEAM各分野の人材から生まれるイノベーティブな試みをつなぎ合わせ牽引していくパワーがあります。

それぞれの専門分野に長けながら枠にはまることなく網羅的に力を発揮することができるSTEAM人材

ここまでの活動をみると、STEAM人材とは一部の限られた天才のみが該当するように感じますが、

適切なマインドセットとスキルを身に着けることで、誰しも到達可能だとヤング吉原麻里子氏は言います。

そして、世界を牽引するSTEAM人材には共通するポイントがあります。次の章ではSTEAM人材に共通する3つのポイントについて解説いたします。

STEAM人材が持つ3つの共通するマインドセットとは

SETAM人材に共通するマインドセットは以下の3点です

  • 型にはまらない自由な発想
  • 「ひとまずやってみる」精神
  • 失敗して前進するパワー

世界の最先端を行くシリコンバレーでは、今まで想像したこともなかった突飛なアイディアをスピード感をもって作り上げるデザイン力が必要となります。

今まで考えてもみなかったアイディアでも、

あったら便利かも!

という潜在的なニーズをふくんでいる可能性があり、

それをデザイン力でビジネスとして練り上げることができれば、人々の潜在的なニーズを反映したイノベーションになります。

このイノベーションを起こすためには

「とりあえずやってみて、失敗して、前進する」というマインドセットが重要であり、

STEAM人材は共通して

失敗を新しいステップを踏み出した証拠として歓迎し、失敗をむしろ「誇り」と考えます。

このマインドセットに加え、

STEAM人材が大切にしている考え方は

  • 人類のために役に立ちたい
  • 人間の生活をよくしたい
  • 人間とは何かという答えのない問いかけを続ける姿勢

であり、21世紀の新しいヒューマニズムとして共有されています。

では、このようなSTEAM人材になるためにはどんな学びを得る必要があるのでしょうか。

STEAM人材になるために必要な学習方法

固定型と成長型マインドセット

STEAM人材に該当する人々は天才的な能力を持った一部の人間ではありません。

というのも、人間の能力は先天的なものだけではなく、学習や経験によって伸ばすことができるからです。

しかし、そうは言っても何か困難な問題が発生した時、問題が難しすぎるといってあきらめてしまう子供がいます。

逆に、課題が困難であるほど目を輝かせる子供もいます。

また、一度の失敗でめげてしまう子供のいれば、失敗を恐れず挑戦し続ける子供もいます。

この「違い」はどこから来るのでしょうか?

ここで興味深い実験をご紹介します。

※この実験の結果に「違い」を解くヒントがあります

実験:パズルの問題を子供に解いてもらいます

そしてパズルが解けた際

  1. 「君は頭がいいね」
  2. 「君はすごく頑張ったね」

と、それぞれ違った声掛けをしてもらいます。

すると、声掛けの違いで子供に変化が現れました。

①の「頭がいいね」と言われ続けた子供は

能力は生まれつき決まってしまっているという【固定型マインドセット】となり

失敗が増えると自分には能力がないとして消極的になってしまいました。

では、②の「すごく頑張ったね」と言われ続けた子供はどうなったのでしょうか?

結果より問題を解くまでのプロセスを大切にする【成長型マインドセット】になり

リスクを恐れず挑戦を続け、失敗からも学ぶため結果的に潜在能力を伸ばすことができました!

この実験からわかることは、リスクを恐れず挑戦し続ける人になってもらいたいのであれば、褒める時でさえ、その子供自身ではなくプロセスを褒めるのが重要ということです。

過程を重きを置くことで、結果にとらわれず挑戦できるマインドが構築されます。

4Cの21世紀型スキル

4Cとは

  • Critical thinking(クリティカルシンキング・批判的思考)
  • Communication(コミュニケーション能力)
  • Collaboration(他者と円滑にはたらく力)
  • Creativity(クリエイティビティ・独創性)

これら4つのCをとったものであり、21世紀型スキルとして重視されています。

4C の学習方法は

  1. プロジェクト・ベース学習(PBL)
  2. プロブレムベース学習
  3. デザインベース学習

この3点です

プロジェクト・ベース学習(PBL)


少人数のグループで自分達で課題を設定し、リサーチや実践を通して課題を解決する方法

日本では総合学習、実践学習と呼ばれています。

プロブレムベース学習

プロブレム=問題や課題をあらかじめ提示し、グループ内で解決方法や解決のためのリソースを探していくプロセスを学ぶ。

このプロセスにおいて、解決方法は1つではないと学ぶことができる

デザインベース学習

まずはアイディアをとりあえず形にして出すところから始め、他からのフィードバックをもとにより優れたデザインにしていく。このプロセスを学ぶのがデザインベース学習

従来の教育と新しい教育の違い

従来の教育とSTEAMを取り入れた新しい教育にはこのような違いがあります。

教育の比較

従来型の教育「STEMからSTEAMへ」
の流れを取り入れた新しい教育
系統学習型デザイン思考
①プロジェクト・ベース学習
②プロブレム・ベース学習
③デザイン・ベース学習
教育の目的知識の習得問題解決能力の習得
教科の関係各教科が独立複数の教科を俯瞰的に学習
教育の主体教師学習者
学習モデル暗記重視プロジェクト学習型
教師が目指す
人物像
社会に適応できる人物社会を変革できる人物
文系は人文
理系は理数工を学ぶ
すべての人がSTEMまたは
STEAMを学ぶ
機能性・論理を重視人間性・直観も重視
適合する社会の
タイプ
工業社会(Sociery3.0)情報化社会(Sociery4.0)
超スマート社会(Sociery5.0)
世界を変えるSTEAM人材(P.177)

学校でとりくみ

computer classroom

21世紀型の教育をとりいれているシリコンバレーにある学校での様子をご紹介します。

スタンフォード大学がある街パロアルトのオローニ小学校では、年齢の異なる生徒が同じクラスメートとして学び、子供も大人もお互いを尊重しファーストネームで呼び合います。

授業スタイルも多様で、クッションを敷いて床に座ったり動きまわりながら教師の話を聞く子供もいます。

日本の学校にあるような単元テストや期末試験はなく、成績通知表もありません。保護者は年に2回の面談と文書でフィードバックをもらい

子供達は定期的に自分自身のパフォーマンスを振り返り、何がうまくいったか、さらに改善するにはどうしたら良いかを客観的に評価します。

『世界を変えるSTEAM人材~シリコンバレー「デザイン思考」の核心~』の感想

今回ご紹介したSTEAM人材に必要なスキルは、シリコンバレーやイノベーションに関係なく、これからの時代に誰もが必要とされるものです。

私も7歳と3歳の子供を持つ親として、本書の内容はとても参考になりました。特に声掛けに関しては、プロセスに重点を置いて褒めることや失敗を歓迎する姿勢、子供であっても自分で選択する大切さを学びました。

プロジェクト・ベース学習(PBL)に関しては、こちらの書籍でも推奨されており、スティーブジョブズが自分の子供に学ばせたかった学習方法として紹介されていました。

好奇心をもって失敗を恐れず、既存のアイディアから新しいイノベーションを起こす人材はすべての子供にチャンスはあるという言葉に力をもらい、これからの子育てに役立てていきたいと思います。

書籍ではありませんが、お子さんと一緒に失敗を恐れず挑戦する心を育てる絵本を紹介している記事もありますので、ぜひご覧ください。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

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