2020年より小学校にて「プログラミング教育」が必修化されました。そこで今回は、小学校でのプログラミング教育の基本的な情報
- 現在の状況はどんな感じなの?
- プログラミング教育とはどんな内容?
- 学校ではどうのように学ぶの?
- 家庭での学習方法は?
これらについて解説したいと思います。
これからは親が学んでこなかったことを子供が学ぶ時代です。技術の進化スピードは年々早くなっていますので、大人も知識のアップデートをして、柔軟に対応していきましょう。
小学校で学ぶ「プログラミング教育」

プログラミング教育ー導入の経緯
現在の日本でも15万人以上の人材が不足し、2030年には最大79万人の人材不足が見込まれているIT分野での人材育成が急務となっています。
この状況を受けて学校教育でも変化が起こっています。
- 2020年度より小学校にてプログラミング必修化
- 2021年度より中学校にてプログラミング学習の強化
- 2022年度からは高校の必修科目として「情報I」が新設
※中学校ではすでにプログラミングは必修化されています
そして、大学入試のセンター試験に代わって導入された「大学入学共通テスト」では、今後プログラミングを国語・数学のような教科科目としてテストに導入しようと検討されています。
いまや世界中で必須のスキルとなったプログラミングですが、小学校ではどのように教えていくのでしょうか。具体的な取り組みを見てみましょう。
小学校での取り組み

小学校でのプログラミング教育について、
文部科学省が目的や内容に関する資料を公開してくれているのですが、
資料を読み込んでの率直な印象は…
まだまだ手探り!!
という感じです。
今回のプログラミング必修化については
文部科学省「小学校プログラミング教育の手引き」に
プログラミング教育の”めあて”や学習の方法などが書かれていますが、
2020年の2月に第3版が更新されました。
第3改訂では、
- 企業と連携して行う指導例
- インターネットや教材の環境整備の重要性
が追記され、学習の目的や理念が変わったわけではないので教員研修を改めてやりなおす必要はないと書かれていました。
そして小学校でのプログラミング教育の授業について、手引きにはこのように書かれてます。
学校の教育活動は、各学校の教育目標の下で、児童や学校、地域の実情等に応じて、各学校において創意工夫を生かした教育課程を編成して実施されるものであり、プログラミング教育も例外ではありません。
小学校プログラミング教育の手引(第一版)
つまり、授業内容に関しては学校の現場に任せるというスタンスなのです。
もちろん先生方もきちんと学んで教えてくれるとは思いますが
やはり教える内容にはバラつきが出てくると予想されます。
AIやロボットなどの普及状況を見ても、今後プログラミング教育はさらに重要で必須のスキルとなりますので
混乱で終わらないために、私達もしっかりと学び知識をつけていくことが大切です。
小学校でのプログラミング教育のとらえ方

小学校ではプログラミング教育をどのように捉えているのでしょうか。
ここで「よくある誤解」について解説したいのですが、
プログラミング必須化によって「プログラミングが教科になる」と思っている方がいますが、それは違います。
国語や算数のように「プログラミング」という教科があるの?
というと、そうではありません。
必修化 = 教科
- 1時間目 国語
- 2時間目 算数
- 3時間目
プログラミング
とはならないんです。
必修化はされるけど教科化されるわけではないんですね。
プログラミング教育と他の教科との関わりを図にすると、このようになります。

この図のように小学校ではプログラミングを個別に学ぶのではなく、教科の中でプログラミングを使って学ぶということです。
そもそも…プログラミングってなんですか?
小学校のプログラミング教育はプログラミング言語を学ぶことを目的とせず、あくまでも
プログラミングを使って何ができるか
を考える作業です。
そのためには、「プログラミングとは何か?」をきちんと知る必要がありますが、そもそもプログラミングとはなんでしょうか?
それぞれの言葉はこのように定義されます。
- プログラム:コンピューターに与える命令そのもの
- プログラミング:上の命令をコンピューターにすること
そして、プログラムとはこのような文字と数字の羅列です

…はい、よくわからないですね^^;
ここで「プログラミングってよくわからない!もういや!」となるのはまだ早いですよ。
では、このプログラミングを「料理のレシピ」に例えてみましょう。これによってプログラミングがとても分かりやすく理解できるのです。
プログラミングを組んで動かしたいものは 作りたい料理になりますが、
例えば「カレー」の作り方を人に教える場合、 レシピはプログラムです。
この場合、読めるか読めないかは別として レシピは英語でもフランス語でも日本語でも カレーができあがりますよね。 そして、レシピの書き方も人それぞれです。
このレシピで使われる言語の違いが プログラミング言語でいうところの PHP、Java Script、Python、Ruby on Rails、C(#) などになります。
そして、レシピで
- 洗う
- 切る
- 炒める
- 盛り付ける
というように行動を指示することがコマンドで そのコマンドによってプログラムが動き、 最終的なゴール、カレーが出来上がるということです。
レシピは人によって書き方も違いますし レシピの順番ややり方によって カレーの出来栄えもかわります。
そして、先ほどのコマンド
- 洗う
- 切る
- 炒める
- 盛り付ける
を見ると【お皿を出す】という動作がないですよね? それでは、どこに盛り付けらたいいかわかりません。 これがプログラムが上手く動かない原因になります。
では、もしこのプログラムがこの順番だったらどうなるでしょうか?
- 洗う
- 切る
- 盛り付ける
- 炒める
- お皿を出す
これもうまくいきませんよね。「カレー」を作るプログラムとしてこの場合の最適な順番はこのようになります。
- 洗う
- 切る
- 炒める
- お皿を出す
- 盛り付ける
そして、この動作(=レシピ)をソースコードで表したものがプログラムということです。
※ソースコード:コンピュータプログラムを表現する文字列。プログラミング言語で書かれている。
小学校でのプログラミング教育は、論理的に考えるプロセスを学ぶことが重視されています。
小学生のプログラミング学習法
では、プログラミング教育はどのように勉強したらよいでしょうか。
先ほどの例にあったように「料理」はプログラミング的な思考を形成するのにとても良い練習になります。
料理をつくるために必要な食材(ソースコード)を考え、調理し(コーディング)、料理(プログラム)をつくる。
どうやったらより美味しく手早く効率的に料理が出来るか考えることがプログラミング的思考のトレーニングとなります。
他にも、例えばワンダーボックスのようなパズルやゲーム、プログラミングができる教材ソフトを使用して家庭で楽しみながらプログラミングに親しむこともできます。
パズルやゲームを通して、この方法ではダメだったけど、この方法はできる?と試行錯誤を繰り替えすことで自然と論理的な思考を身に着けられます。
小学校プログラミング教育の具体的な取り組み

小学校ではプログラミング教育をどのように教えるのでしょうか。
授業例
2020年度プログラミング必修化に先駆けて、モデル校ではすでにプログラミング教育を取り入れた授業が行われています。
実例があると、プログラミング教育をどうやって学ぶかイメージしやすくなると思いますので、
文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引き」に紹介されている
実際のモデル校の授業で行われたプログラミング教育の実用例をご紹介します。
例1: 算数
- 正多角形をプログラムを使ってかいてみよう
- 小学校5年生
- 利用教材:Scratch(スクラッチ)
- 正多角形を手書きした場合とコンピュータ(Scratch)で書いた場合の違いについて確認する
例2:理科
- 電気を効率よく使う方法を考えよう
- 小学校6年生
- cLEGO Education WeDo 2.0
- 自分達の生活のなかで電気を利用している場面を考え、どのようにしたら電気を有効的に利用できるか考える。スイッチのオンオフをプログラミングし制御することで効率的に電気が使用できる仕組みを構築する。
例3:音楽
- 様々なパターン・リズムを組み合わせて音楽をプログラミングする学習
- 小学校3~6年生
- 音楽創作用ソフト・プログラミング言語
- 創作用ソフトを利用し、あらかじめ用意されているリズムやメロディーを組みわせて作曲する。
例4:総合的な学習の時間
- 未来の宅配便のアイディアを考えよう
- 小学校5年生
- 利用教材:mBlock, mBot
- ヤマト運輸の担当者をゲストに招き宅配のシステムを学ぶ。仮の街を作成し、住人のニーズにあわせた動きをmBotにプログラミングし動かしてみる。
例5:特別活動
- パソコンクラブにてプログラミングを体験する
- 小学校4~6年生
- 利用教材:BBC micro:bit, Scratch, Viscuit, embot
- 作品をつくったり発表する機会からプログラミングを学ぶ
これらの取り組みを見るとわかりますが、「プログラミング教育ってこんな感じかな」と想像していたものと違ったかもしれません。
小学校でのプログラミング教育では、
- どうやったら物事が効率的により便利になるか
- 私たちの生活をより良くするためにコンピューターでは何ができるのか?
これらを考えるのがプログラミング教育の重要な役割とされています。
プログラミング教育で成績はつくの?
文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引き」にはプログラミング教育の成績のつけ方についてこのように書かれています。
プログラミングを実施した際の評価については、あくまでも、プログラミングを学習活動として実施した教科等において、それぞれの教科等の評価規準により評価するのが基本となります。すなわち、プログラミングを実施したからといって、それだけを取り立てて評価したり、評定をしたりする(成績をつける)ものではありません。
小学校プログラミング教育の手引(第一版)
プログラミング教育は教科ではないので成績はつきませんが、算数や理科の中でプログラミングのスキルを使うので、その国語や算数の教科で成績がつくようになります。
「それなら…成績がつかなならプログラミングは勉強しなくていいかな」
と思いがちですが世界的な流れをみても今後プログラミング的思考はとても重要となりますので、学ぶ必要があると言えるでしょう。
プログラミング教育の重要性

学校で成績がつかないのであればプログラミングを詳しく勉強する必要はないのでしょうか?
「教科ではない=必要ない」というわけではありません。
なぜなら、これからの子供たちにとってプログラミングのスキルや考え方はとても重要です。
事実、プログラミングをふくめたSTEAM教育がアメリカを筆頭に世界的に広がっています。
では、なぜ世界中でプログラミング教育が重要視されているのでしょうか。
それは、プログラミングがこれからの時代に必ず必要となる知識とスキルだからです。
AIの市場規模と今後について
調査会社の富士キメラ総研はこのように発表しています。
2018年の市場規模が5,301億円なのに対し、2030年度には2兆1,286億円の市場へ拡大すると予想。
AIは今後確実に伸びていく分野であり、その分野で確実に必要なのがプログラミングということです。
家庭でのプログラミング学習法

プログラミングの重要性はわかりました。
しかし学校ではプログラミング的思考を学んでも、プログラミングのスキルを学習することはないので個々で取り組む必要があります。
最近はプログラミング教育の重要性が広まり、子ども向けのプログラミング教材やスクールが増えています。
「でも、子どもの頃からプログラミングスクールに通うのは難しそうだし、まだ早いかな……」
と思うかもしれません。
その場合は、先ほどご紹介した「料理のお手伝い」や子供向けプログラミングの絵本から入るのが良いと思います。
実際にScratch(スクラッチ)などのソフトを独学で極める子ども達もたくさんいます。
ただ、モチベーションの維持や
先生からスキルや考え方を効率的に学びたいのであればスクールという選択肢もありだと思います。
小さい頃から遊ぶように学ぶことで「プログラミング=難しい」という先入観なく学ぶことができます。
いまでは遊びながら学べる教材や、自宅で学べるオンラインスクールがありますので、送り迎えを気にせず効率的に学ぶことができます。
プログラミングによって論理的視点を持つことや、試行錯誤をした経験は必ず将来の役に立ちます。
小学校プログラミング教育 必修化のまとめ
2020年度から始まると言われてはいるものの、いまいち情報が出てこないプログラミング教育。現状ではまだまだ手探りだということがわかりました。
プログラミングは教科として勉強するのではなく、算数や理科のカリキュラムをコンピュータやプログラミング思考を使って学びます。
これから小学生でも一人一台タブレットやパソコンが支給されるようになり、より本格的なICT教育が実施される時代
今回の記事がこれからの教育において重要とされる
プログラミング教育の今を知り
将来を見すえた学習設計の助けになれば幸いです。